医療最前線
今、内科医小児科医が成立しにくくなっています。検査技術が発展し、「赤ひげ」のような「まごころと経験と直感」だけでは病気を発見できず、すぐに大病院に紹介状を書かなければならなくなってしまう。紹介状を書かなければ病気の発見が遅れ、すぐに医療過誤の訴訟を起こされてしまう。とってもハイリスクのビジネスになってしまったのです。
私は人間ドック併設の「六本木の町医者」にかかっています。その先生は、何年もの人間ドック結果の豊富なデータを元に診断できます。
このクリニックは、スタッフの接遇レベルの向上を図っておけば六本木の地の利から良質の患者(クランケと言うよりもクライアントですね)集団を形成できるわけです。クライアントとしても検査データが集積しているものだからほかのクリニックに逃げて行きにくいのです。今のドクターは「カスタマーロイヤリティ」まで考えて経営しているのですね。
私はとある大手大学病院で定期的に胃の内視鏡検査を受けていました。
今回の胃バリウム検査で「要精密検査」と言われました。「あ、そうですか。ではいつもの大学病院に行ってきますわ。」と言いかけたところ、「うちのクリニックで胃カメラ呑んでくださいよ。」と「営業」されてしまいました。
今や、医師も営業する時代なんですね。
そう言えば、その「とある大手大学病院」でも、「それでは、吉田さんはレントゲンを撮られたらいかがでしょうか?」と「尋ねられて」面食らったことがあります。
昔なら、「吉田さん次はレントゲン」と自動的に、そして言葉少なに、質問・反論の余地もなく回されたものですが・・
それこそ、「それでは、ポテトをお付けしましょうか?」というようなトーンだったのですよ。「なな!何と!接客マニュアル通りか?!」と思っちゃいました。「わかりました。」と返事したところ、「そうですか。ありがとうございます。それでは、レントゲン撮影のリスクの説明をしますね。」と言われて二度ビックリ。
証券会社の口座開設の重要事項説明を受けているような気になりました。確かに証券投資と同様に医療行為というのは患者側にも医療機関側にもリスクがありますので、事前に開示して同意を得ることが重要です。
この「インフォームドコンセント」は医学界でも十年以上も前から叫ばれていましたが、「白い巨塔」的な医師のプライド、そして一人一人の患者に時間をかけられないという経済原則(もちろん、できる限り多くの患者を診たいという医師の美しい意識がある)を崩すことができずに形骸化していました。
医師も営業し、重要事項の事前同意を求める時代・・・ とても理屈に適っているし、親切でもある。
ただ、患者の利便とクォリティオブライフを優先しているのか、訴訟リスクを回避するためだけの自己組織防衛を優先しているのか。その根底の「心」が問われていくのです。