2009年7月

能天気(失礼!)なあなたへ

かつて、姉歯・ヒューザー事件で大騒ぎでした。虎の子をはたいて購入したマンションが耐震基準に合致しておらず、建て替えを余儀なくされた人々がたくさんいらっしゃいました。
 
そんな報道を見ながら、「かわいそうになぁ」とつぶやいていた視聴者は能天気です。だって、自分の住んでいる家屋が築7年超なら、現在の建築基準法の耐震強度基準を満たしていないのです。もっと古い物件ではヒューザーの耐震偽装マンション以下の強度かもしれません。日本の家屋で耐震基準を満たしていない家屋・マンションはすさまじい数になると思います。

あの事件は他人事ではなかったのです。

耐震基準の変遷は以下のようになっています。現在住んでおられる家屋はどの時代の耐震基準なのか確認してみてください。
 
 1924年(前年に関東大震災)市街地建築物法施行規則改正(水平震度0.1を要求)
 1950年(2年前に福井地震)建築基準法施行令(旧耐震)(水平震度0.2を要求)
 1971年(3年前に十勝沖地震)同施行令改正(RC造の帯筋の基準を強化)
 1981年 同施行令改正(新耐震)(一次設計、二次設計の概念の導入)
 2000年(5年前に阪神大震災) 建築基準法及び同施行令改正(性能規定の概念
 導入。構造計算法として許容応力度等計算に加え、限界耐力計算法が認められ
 る。)
 
助成金を支出して(これは一種のばら撒き)、建て替え工事やら補強工事を促すことが始まっています。

この方式の問題点は、助成金投入が人口に連動するので、どうしても都市圏に税金が投入され、都市圏の業者ばかりが潤う図式になることです。自然維持のための地方交付金(自然を保全するほど増額する交付金)を新たに設置してほしいものです。

もうひとつの問題は、建て替えの前に耐震構造診断が必要で、しっかりした技術を持った診断士(建築士等。自治体ごとにばらばら)の数がおそらく不足していることと、診断して、工事方式を決定して、着工するまでに何ヶ月もかかりますからカンフル剤的な景気浮揚効果が期待できないことです。

マクロ経済はとにかく、自分の住んでいる家のことをまず心配して、調べることから始めてみませんか。命にかかわることですから。

定期保険5

定期保険4において、「三利源」「四利源」という話をしました。

その中で、保険契約の締結や維持に関するコストという予定費用という話がありました。
予定費用というのは、保険会社の経営方針によって大きな差が出るはずのものです。

かつて大蔵省の時代の規制行政下では、予定費用も管理されていて、「当社はコストダウンしていますから、保険料を安くできます。」あるいは、「配当金を多く支払うことができます。」という論理が許されていませんでした。各生命保険会社の保険料はほとんど変わらなかったのです。「どこの保険会社に加入しても同じ」にして、安定した業界を維持しようという方針だったのです。

これには、生命保険会社の特質がかかわってきます。長期的な保険金支払に備えるために責任準備金という積み立てを行うのですが、最大手の日本生命だと平成19年9月30日現在、42兆3千億円に達します。そして、会社の自己資産等も含めた総資産は51兆円。このうちの36兆6千億円が有価証券として運用されています。さらにそのうち13兆円が国債・地方債、株式が11兆円です。

財務省から見れば日本生命を始めとする保険業界は国債・地方債の重要な引き受け先です。何かの理由で動揺して、国債を大量に売却すると財務省は非常に困ることになります。また、日本生命1社ですら株式市場を大暴落させるのに充分な株式保有高です。ですから、生命保険業界の安定を維持することはとても重要なことなのです。

ただ、「どこの生命保険会社に加入しても同じになるように業界を規制する」とか、「外資の参入を拒む」というような考え方は大蔵省が財務省と金融監督庁(現在の金融庁)に分けられてから(霞ヶ関の本庁は分割されても、地方財務局は分かれていなかったりします)、少しずつ変わってきました。でも、小渕内閣時に大量発行された10年国債が償還ピークを間もなく迎える(「2008年問題」)ので、国債の円滑な引き受けのために財務省担当局はピリピリしているに違いありません。

次に、予定利率です。
予定利率は世の中の長期金利につれて変化します。予定利率を高く設定すると、保険料は安くなります。低く設定すると保険料は高くなります。その度合いは貯蓄性の保険において高く、掛け捨ての保険において低くなります。昭和の終わりごろの貯蓄性保険契約(養老保険、終身保険、年金保険)の予定利率の高さは絶頂となり、定期預金とかワリチョーなどよりもずっと有利な貯蓄手段となりました。基本的に養老保険をベースにして保険設計を行っている郵便局(今はJP)も簡易保険の限度額(被保険者ひとりあたり、1000万円まで)いっぱいまで養老保険などを売りまくりました。

予定利率を設定しても、会社としての実際の資産運用利回りには従わなければなりません。全契約平均の予定利率よりも高い利回りで資産運用ができた場合には会社に利益が残ります。これを「純ザヤ」と言います。その逆の場合は、「逆ざや」と呼ばれます。

バブル崩壊後に、大きな逆ざやが生じた、日産生命、東邦生命、千代田生命、協栄生命、第百生命、大正生命、東京生命が破綻しました。契約者たちの中には契約時に約束された解約返戻金や満期保険金、解約返戻金を満額は受け取れない人も生じました。

定期保険4

定期保険の説明から確率論の話となり、有配当保険と免責条項で、たくさん述べてしまいました。定期保険4においては、再び保険契約の基本的な数理に話を戻します。
定期保険1において、保険契約は死亡保険金1000万円で死亡率1%だと保険料10万円という期待値の話をしました。

でも、そんなに単純じゃないよ、ということで
・ 保険会社にも利益が必要
・ 保険契約のためのコストがある
・ 1年間だけの保険だけでなく、5年契約、10年契約、20年契約などあり
・ 長い期間だと途中で死亡率が上昇していく。それでも保険料を一定にするためには。
・ 掛け捨ての保険だけでなく、貯蓄性のある保険もある。金利も考えないと・・
というような要因を挙げました。

これらについて、生命保険契約の「三利源」「四利源」の話をしたいと思います。
保険契約を設計するためには以下の数値を使います。
・ 基本的な確率
・ 契約締結、契約維持のための費用
・ 金利
・ 解約率

これらを設定して保険数理人(アクチュアリ)が保険料を計算します。
死亡率というのは厚生労働省の人口問題研究所が統計調査を続けており、生命表というものを発表しています

平成18年簡易生命表

 

男性

女性

年齢

生存数

死亡数

死亡率

平均余命

生存数

死亡数

死亡率

平均余命

0

100,000

388

0.00388

79.00

100,000

339

0.00339

85.81

5

99,612

57

0.00057

74.30

99,661

45

0.00045

81.10

10

99,555

58

0.00058

69.34

99,616

38

0.00038

76.13

15

99,497

180

0.00181

64.38

99,578

89

0.00089

71.16

20

99,317

291

0.00293

59.49

99,489

143

0.00144

66.22

25

99,026

326

0.00329

54.66

99,346

168

0.00169

61.31

30

98,700

384

0.00389

49.83

99,178

200

0.00202

56.41

35

98,316

528

0.00537

45.02

98,978

289

0.00292

51.52

40

97,788

811

0.00829

40.25

98,689

431

0.00437

46.66

45

96,977

1,291

0.01331

35.56

98,258

659

0.00671

41.86

50

95,686

1,981

0.02070

31.00

97,599

992

0.01016

37.12

55

93,705

3,070

0.03276

26.60

96,607

1,420

0.01470

32.48

60

90,635

4,500

0.04965

22.41

95,187

1,927

0.02024

27.92

65

86,135

6,276

0.07286

18.45

93,260

2,931

0.03143

23.44

70

79,859

9,524

0.11926

14.69

90,329

4,817

0.05333

19.12

75

70,335

13,875

0.19727

11.31

85,512

8,026

0.09386

15.04

80

56,460

17,504

0.31002

8.45

77,486

13,505

0.17429

11.32

85

38,956

18,345

0.47092

6.09

63,981

20,092

0.31403

8.13

90

20,611

13,312

0.64587

4.32

43,889

21,995

0.50115

5.66

95

7,299

5,819

0.79723

3.08

21,894

15,194

0.69398

3.88

100

1,480

1,342

0.90676

2.20

6,700

5,734

0.85582

2.63

105-

138

138

1.00000

1.57

966

966

1.00000

1.76

オリジナルの表では1歳ごとに数字が出ていますが、少し簡略化して5年毎で表しました。男性10万人が生まれたとすると、5歳になるまでに388人が亡くなって、99,612人になる、そのように表を読みます。20歳の男性99,317人が30歳には98,700人になり、その間に617人亡くなる。20歳から29歳までの10年間の死亡率は、0.62%と計算されます。
各年齢における「平均余命」が計算されています。そして、0歳の人の平均余命を「平均寿命」と言います。ですから、50歳の男性が、「平均寿命が79歳だから、あと29年か・・」と言うのは実は間違いでして、50歳の男性の平均余命は31年ですから、81歳という、もっと長生きする前提で老後資金プランを立てなければならないのです。
生命保険会社は、この厚生労働省の生命表も参考にしつつ、自社の死亡データも考慮した生命表を作成し、これに多少の「プレミアム(のりしろ)」をつけて生命保険契約の計算をしています。

かつては、生命表は業界で統一されていました。旧大蔵省が規制・指導していた賜物です。
近年、生命保険会社間の競争が激しくり、金融庁の縛りが少しずつ緩和されてきています。前提とする死亡率を小さめに計算することで安い保険料を設定し、競争力を高めるという動きが起き始めています。
 
ところが、
・ 設定した確率ほど保険事故(死亡、入院、要介護状態など)が起きなかった
・ 設定したほど費用支出がなかった
・ 設定した金利以上で資産運用できた
・ 設定した以上に解約があった
場合には、有配当契約であれば契約者に配当して返しますが、無配当契約であれば保険会社に利益が残ることになります。

日本人の平均寿命が伸びているというのはご存知の通りですが、このことは生命保険会社にとっては、
 死亡率が減少している
ということになります。

そのため、戦後生命保険会社には、想定ほどの死亡がなかったということで毎年利益が残りました。これを死差益と呼びます。(この死差益って、保険業界以外の人にとっては、ドキっとするような響きがありますね。)

「ひとりが万人のために 万人がひとりのために」 ・・・ 生命保険の話

生命保険は、予期せぬ事故や病気などによって働き手が働けなくなるときの経済的ショックを和らげるための金融商品です。

たくさんの人から公平に保険料を集め、万が一に備えた準備金(責任準備金)をつくります。そして、“こと”が起きてしまったときに準備金から保険受取人に支払われるという仕組みです。

数学的な計算だけでなく、互いに助け合う「相互扶助」という気持ちによって成り立っています。

「ひとりが万人のために、万人がひとりのために」は、アレキサンドル=デュマの三銃士にでてきます。One for all, all for one.

これが生命保険・損害保険の基本の精神、これが一番の特徴です。

次に、保険の二番目の特徴を述べます。

契約が開始した日から直ちに多額の保障が発生することです。
亡くなると多額の資金が必要となるとして、積立を始めます。毎月1万円を積み立てると1000万円になるのに、83年4ヶ月かかります。でも、生命保険契約なら1ヶ月分しか保険料を払っていなくても1000万円を受け取ることができるのです。

三番目の特徴は、保険は確率論で成り立っていることです。

生命保険だと若い人と高齢の人では死亡率が何十倍も異なります。
そこで、不平等が生じないように年齢や性別に応じて危険度を綿密に分析し、高度な計算を行って算出しています。

死亡率にゆらぎがあっても生命保険会社の経営が揺らがないように、保険会社が一方的に儲かりすぎないように計算されています。

四番目の特徴は、保険は営業の人が商品の機能の一部を担っていることです。

保険契約は、契約締結に始まり、契約終了時まで続きます。

保険の営業の人は、契約者のさまざまな状況を聞き出して、その人にふさわしい保険契約を選んで、あるいは組み立てて提案します。契約者が同意すれば、締結の作業を行います。その過程で、契約に関する重要事項の説明を行います。

契約がスタートすると、定期的な見直しや、入院した時の手続きなどを行います。

そして、契約終了というのは、生命保険の場合、
・ 最初に設定された契約満了日
・ 契約者が解約した日
・ 被保険者がお亡くなりになった日
・ 約款に定める契約解除が行われた日

があります。

契約によっては、5年、10年、20年などで満了することがありますが、終身保険というタイプでは被保険者が亡くなったときが、契約終了です。

被保険者が亡くなったときには、ただ保険金が支払われれば良いというものではありません。

遺族の精神的なショックを共感し、そのショックを和らげるように行動し、ショックから立ち直るための支援をします。遺族の将来の生活がうまく整うように尽力します。

今、ネット保険や通販保険がありますが、生命保険の場合には、「人が関与する」ことがとても重要だと思います。

そもそもの話 ・・・ 生命保険の話

生命保険がいつごろ誕生したかご存知ですか?

17世紀にロンドンのセントポール寺院の牧師たちが葬式代をまかなうために、お互いにいくらかずつ出し合って積み立てを行いました。これが生命保険の始まりと言われています。(香典前払保険・香典前払組合)。

ただ、年齢に関係なく同じ金額を払い込んでいたため、高齢者は比較的少ない保険料で同じ金額の保険金(葬式代)を受取ることになり、若い者が参加しなくなって、10年ほどでなくなったみたいです。

ギャンブル好きのイギリス人は当たる法則を考えて確率論が発展しました。

「ハレー彗星」で有名な天文学者エドモンド・ハリーは人間の寿命データを調査しました。年齢ごとに生存している人死亡した人の割合をまとめた統計データとして、生命表を作成しました。

こうした統計ができたことで、「誰がいつ亡くなるかは全くわからないが、年齢ごとの亡くなる人数(死亡率)はおおむねはっきりする」ことが立証されました。

これは確率論における「大数の法則」と呼ばれるもの。サイコロを振っても何の目が出るかわかりませんが、6000回振ればそれぞれの目が1000回程度となる現象です。

さいころだけでなく、人間の寿命も同様で、誰がいつなくなるかは全く分からないものの大勢集まると限りなく生命表の死亡率に近づくわけです。これによって、年齢ごとに保険料を払う者の人数と亡くなる(保険金を受取る)者の人数が推定され、年齢ごとに保険料に差のついた生命保険契約がビジネスとして成立する基礎ができあがったのです。

(この生命表に基づく計算は、戦争や大規模災害等による大量死には対応できず、現在の生命保険の多くは、戦争・災害の場合に免責できるような約款となっている。)

(でも、阪神淡路大震災において火災保険は免責となったが、生命保険は免責とならなかった。)

近代生命保険の発祥は、1762年にイギリス・ロンドンに設立されたThe Equitable Life Assurance Society(エクイタブル生命)です。Equitable という言葉が「等価にできる」ということなのでしょう。

さて、日本の生命保険の起源は約100年前。福沢諭吉が著書の中でイギリスの保険を紹介したことが始まりです。

1880年(明治13年)に日本最古の生命保険組織として共済五百名社が結成されました。これが日本の生命保険の起源です。そして、最初の保険会社は1881年(明治14年)7月9日に設立された明治生命(現・明治安田生命)。

共済五百名社の運営に行き詰まった創業者の安田善次郎は、矢野恒太の「相互主義」に賛同し、安田生命保険として再発足しました。(1894年、明治27年)。

この二社は、「当社こそ日本初の生保」と競っていましたが、両社の合併で自然収拾しました。

定期保険3

生命保険契約の免責について話してきました。

その中で、「地震免責」という話が出てきました。これについては、生命保険と損害保険会社の火災保険で対応の違いがありますので、そのことについて述べようと思います。

私の知る限り、戦後に生命保険で地震免責や災害免責が発動された例はないようです。例えば阪神・淡路大震災において6,434名がお亡くなりになりましたが、死亡保険金、入院保険の給付金は支払われました。

なぜ支払われたかという理由はふたつが考えられます。
・ 日本人は年間100万人が死亡する。6000人というのは、0.6%増えただけなので保険会社として吸収できた。
・ 亡くなった方のうち6割は女性。そして、60代以上のお年寄りが多かった。年寄りほど古くて倒壊しやすい建物に住んでいたと考えられる。お年寄りが加入している生命保険契約は65歳または70歳で高額(3000万円とか5000万円とか)保障期間が終了し、50~300万円程度の保険金になっていることが多い。

損害保険会社が結んでいた火災保険契約にも地震による倒壊、火災は免責条項になっています。こちらは支払われなかったとのことです。その理由は、地震の場合は多くの建物が倒壊(阪神・淡路大震災では、10万5千棟)し、火災(同住家全焼6,148棟)が起きますが、このような多額の損害に損害保険会社は基本的に耐えられません。

そのために、地震保険が存在しています。地震保険があるのだから、地震保険なしの火災保険には地震免責がしっかりと適用されたというわけです。

この地震保険というのは火災保険の保険金の半額を限度とし、保険料もだいたい倍額、すなわち保険料は約4倍というものです。そして、日本国政府が再々保険を受ける形で引き受け保証しています。

政府が保証しているといっても無制限ではなく、5兆5千億円という限度額(平成20年4月現在 損保業界と政府の保証額合計)があります。この限度額が充分なのか不充分なのか私には判断しがたいですが、契約物件に対してそれ以上の被害が発生した場合には割り引かれて保険金が支払われることになります。

この限度額というのは、今まで段階的に増やされてきました。大地震に備えて設定されていますので、今まで支払われた保険金額よりも受け取り保険料の方がずっと多額です。これは地震再保険特別会計という政府のポケットに備蓄されていきます。この備蓄された金額が増えてくるほど限度額が高く設定できるのですね。

現在、地震学者は首都圏の直下型地震が「必ず起こると思ってください」と叫び続けています。それほどに地質学的なひずみエネルギーが蓄積されているようです。それを受けて、地震保険への加入率を上げようという政策がなされていて、平成19年分より所得税計算における「地震保険料控除」が始まりました。

検索

お気に入りリンク

タグクラウド