日本人は明治時代に「都市生活者」というものを生み始めた。身分が固定されていた封建制度が崩れたことで立身出世主義も生まれた。ただし、東京で邸宅を建てられるのは薩長藩閥でなければ無理で、大部分は借家住まいだった。
日露戦争後は財閥の力が強くなり、三菱・三井の経営者とその一族郎党(関西では住友・鴻池)が豪壮な邸宅を建てるようになる。渋谷・新宿より西側地域の宅地開発も始まった。
戦後、東京・大阪の大都市圏は空襲により大きな被害を受け、少しずつ都市設計がなされていく。地方は農地改革によって小作人が地主となった。「この土地は自分のものだ」という大きな喜びを感じたことだろう。ただし、工業化に伴う経済成長の果実を地方・農家に流し込む田中角栄の諸政策(食管制度、道路特定財源など)が機能するまでは貧しく、農村の中卒者は「就職列車」に乗って集団就職していった。
核家族化が戦後進展していく。それは、農業から重化学工業への労働力のシフトだった。江戸時代~大正次代までの都市生活者以外のライフスタイルは、大家族がちょっと大きめの家に3世代が住み、農業には家族総出で取り組む。子育ても老親介護もファミリー内で行うというものだった。そこには家父長制の下で家に縛り付けられた女性たちの犠牲があった。
昭和40年代には経済高度成長を国民誰もが実感するようになった。都市郊外圏に団地やニュータウンが続々と建設された。「マンション」という名の建物も多く建設され、持ち家率は急上昇していく。昭和45年からは減反政策が始まり、農業から工業に転じて豊かになっていくという流れが当たり前になった。
昭和50年代までのサラリーマンは、「定年後は帰省して百姓やるんだ」と思っている人も多かった。故郷の山や川がアイデンティティで、「故郷に錦を飾る」という言葉がまだ存在していた。しかし、「兎追いし彼の山。小鮒釣りし彼の川」という郷愁やノスタルジーを減反政策の現実が襲う。故郷に帰ってもそこで農業には戻れないのである。また、田中角栄の目指した「地方への重点公共投資」は建設省国土省の霞ヶ関官僚が作った企画どおりの工事がなされていき、地方は均質化。地方圏の自然破壊も顕著になり都市に馴れた人を呼び戻す魅力を欠くようになっていった。
購入した自宅が「終(つい)の棲家」という意味を持つようになる。これが持ち家への執着を強化することになった。
日本人の多くが家を所有するようになって50年ほどしかたっていない。なのに、多くの人は、「昔から日本人は持ち家を求めていた」と言う。それは錯覚なのだ。
2009年9月4日10:10 AM|
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資本主義経済は、みんなが(あるいは誰かが)お金を使わなければ成立しないという構造である。個人が将来のために貯蓄をすると一国の経済としては困るのだ。だから人口が減少するということは非常に大きなインパクトとなる。団塊の世代は、「ただ数が多い」ということだけで、消費の主役となった。「ヤング」「ニューファミリー」「アクティブシニア」などと団塊世代の年齢層が常にマーケティングのターゲットとなった。サラリーマン川柳に、「団塊は無駄遣いのみ期待され」というのがある。けだし名言である。
現時点では、アクティブシニア向けのマーケティングは不発のように見える。投資信託や変額年金、個人国債がたくさん売れているので、消費ではなく金融商品に流れているらしい。国債以外の前二者は外貨商品が含まれており、海外経済を潤すものの日本国内の企業を活性化させにくいものなのが、大きな問題である。
かつて株式会社エイブルが「一生賃貸」という本を著して、コンセプトの提案をした。
その時点は、マンション価格がバブル後の安値になっており、ローン金利も非常に低かった。だから、「賃貸vs持ち家」論争も試算すれば持ち家に軍配が上がったと思われる。ところが、ゼロ金利政策は終了し、首都圏は不動産価格が上昇して、都心においてはミニバブルになった。マンションを買っても、姉歯のような偽装が起き、清水建設というような一流ゼネコンの施工でも鉄骨不足が起きることがわかった。また、人口の減少が現実のものとなり、定常的な賃上げなどトヨタのようなごく一部の大企業に限られる、というのが実態だ。
日本人の持ち家信仰は、日本社会の脱農業化、核家族化にともなって起きた社会変化を景気対策したい政府が後押しをした中でなされた「洗脳」であり、たかだか50年くらいのものである。国土交通省の「持ち家奨励策」は景気対策の必要の都度、公庫金利を下げて住宅建設を促したのである。これは住宅金融公庫の改組も含めて、2006年に終了したが、このことを国民の何%が知っているのだろうか。
ペーパー『L25』(リクルート)の 2月21日号に、「いずれ持ち家(マンションや一戸建て)に住みたいと思う?」というアンケートの結果が掲載された。89.2%の人がYesと回答しているのだ。Noは10.8%に過ぎない。アンケートは、L25とR25のウェブサイトで1月に実施されたもので、20から34歳の男女・2223名の結果を集計している。
このアンケート結果は、いわゆる「持ち家信仰」がこの世代にも引き継がれていることを示している。
それが洗脳であるのは、今の客観的状況は必ずしも持ち家購入を有利としないからである。論理的に考えると、家を買う必要のある人は実はそれほど多くないのだ。
2009年8月19日10:08 AM|
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いったい家にいくらのお金を投入するつもりなのでしょうか?
自宅費用 = 頭金+借入額×倍率 + 維持費 + 固定資産税
この倍率というのは、元利均等返済の借入利率と返済年数から計算できます。
| 金利 |
2% |
3% |
4% |
5% |
6% |
7% |
| 10年 |
1.10 |
1.15 |
1.21 |
1.27 |
1.33 |
1.39 |
| 20年 |
1.21 |
1.33 |
1.45 |
1.58 |
1.72 |
1.86 |
| 30年 |
1.33 |
1.52 |
1.72 |
1.93 |
2.16 |
2.39 |
例えば、4000万円の物件を頭金1割、残額を3%30年の元利均等返済で借り入れると、
自宅費用 = 400万 + 3600万×1.52 +α
= 5872万 +α(維持費)
そして、住宅の維持費を考えます。マンションだったら管理費+修繕積立金=1~2.5万円 くらいでしょうか。一戸建ての場合には、その他の費用、さらに固定資産税が年額10~30万円ぐらいでしょうか。例えば それぞれ、2万円、20万円としますと、
リタイアまでの住宅維持費 = (2万×12+20万)×26年 = 1144万円
合計の自宅費用は 5872万 + 1144万 = 7016万円
一方で、生涯の可処分所得を概算してみましょう。
台形の面積の公式 = (上底+下底)×高さ÷2 と同じ考え方です。
生涯賃金概算額 = (現在の年収 + リタイア時の推定年収)×
リタイアまでの年数 ÷2 + 退職金推定額
あなたが34歳年収700万円、60歳時に部長でリタイアするとする。部長の年収は1200万円、退職金は1500万円とすれば、
生涯賃金概算額 =(700万+1200万)×26÷2+1500万=2億6200万円
これまでの収入をオンすれば3億近く。
大卒の生涯所得は2~3億と言われるのがうなずかれますね。(しかも、勝ち組!)
そして、これらの前提が既にとても不安のある前提であることを感じた方も多くいらっしゃるのではないですか?この段階で自宅購入のために生涯賃金の2~3割を投入することがご理解いただけると思います。次に可処分所得を計算します。
所得税+社会保険料を生涯賃金の2割としてください。これはちょっと甘いかなと感じた人は3割としてもかまいません。上記の例では、
生涯可処分所得概算額 = 26200万 × 8割 =2億960万
住宅購入は生涯可処分所得の3~4割の投入になることがわかります。
2009年8月3日9:43 AM|
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かつて、姉歯・ヒューザー事件で大騒ぎでした。虎の子をはたいて購入したマンションが耐震基準に合致しておらず、建て替えを余儀なくされた人々がたくさんいらっしゃいました。
そんな報道を見ながら、「かわいそうになぁ」とつぶやいていた視聴者は能天気です。だって、自分の住んでいる家屋が築7年超なら、現在の建築基準法の耐震強度基準を満たしていないのです。もっと古い物件ではヒューザーの耐震偽装マンション以下の強度かもしれません。日本の家屋で耐震基準を満たしていない家屋・マンションはすさまじい数になると思います。
あの事件は他人事ではなかったのです。
耐震基準の変遷は以下のようになっています。現在住んでおられる家屋はどの時代の耐震基準なのか確認してみてください。
1924年(前年に関東大震災)市街地建築物法施行規則改正(水平震度0.1を要求)
1950年(2年前に福井地震)建築基準法施行令(旧耐震)(水平震度0.2を要求)
1971年(3年前に十勝沖地震)同施行令改正(RC造の帯筋の基準を強化)
1981年 同施行令改正(新耐震)(一次設計、二次設計の概念の導入)
2000年(5年前に阪神大震災) 建築基準法及び同施行令改正(性能規定の概念
導入。構造計算法として許容応力度等計算に加え、限界耐力計算法が認められ
る。)
助成金を支出して(これは一種のばら撒き)、建て替え工事やら補強工事を促すことが始まっています。
この方式の問題点は、助成金投入が人口に連動するので、どうしても都市圏に税金が投入され、都市圏の業者ばかりが潤う図式になることです。自然維持のための地方交付金(自然を保全するほど増額する交付金)を新たに設置してほしいものです。
もうひとつの問題は、建て替えの前に耐震構造診断が必要で、しっかりした技術を持った診断士(建築士等。自治体ごとにばらばら)の数がおそらく不足していることと、診断して、工事方式を決定して、着工するまでに何ヶ月もかかりますからカンフル剤的な景気浮揚効果が期待できないことです。
マクロ経済はとにかく、自分の住んでいる家のことをまず心配して、調べることから始めてみませんか。命にかかわることですから。
2009年7月24日9:50 AM|
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